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第四章・7

 衛は、早紀と初めて会った時のことを思い出していた。  友人たちとはしゃぐ、普通の高校生。  一杯10,000円のブラックアイボリーを、澄まして頼む度胸。  コーヒーを飲んだ後の、晴れやかな笑顔。 (早紀をあんな風に、もう一度戻してやれるのなら) 「早紀。本当に、いいのか?」 「お願い。僕、欲しい……」  その言葉に、今度は衛の方からキスをした。  優しく、そっと口づけた。  早紀の激情を、受け止めた。  やんわりとリップを食み、舌で喉奥をくすぐる。  舌を絡め合い、その裏を刺激する。 「んぁ。はぁ、うぅ。ふ、うぅ、う……」  次第に早紀は、落ち着いていった。 (こんなキス、初めて)  今まで付き合った上級生や同級生たちは、皆せわしくキスをしたものだ。  キスの後に待ちかねているお楽しみにのぼせ上り、雑に口づけたものだ。 「ね、衛さん。衛さんは、大人なんだね」 「大人だから、子どもは抱いちゃいけないんだが」 「僕は、もう18歳だよ。大人だよ」  くすくすと笑い合い、衛は早紀の頬にキスをした。  頬から耳に移り、じっくりと愛撫する。 「っく、あ。んぁ、はぁ……」 (耳がこんなに感じるなんて、知らなかった)  僕は今から、本当の。  大人に抱かれるんだ。  憧れの、衛さんに。  早紀は再び、腕を彼の体に回した。  はだけたパジャマをすり抜け、その熱い肌に触れた。

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