36 / 145
第五章・7
「うぁう。うぅ、うぁ、あ……」
「大丈夫か?」
「ぅん……」
早紀は衛にしっかりとしがみつき、鼻を擦り付けた。
甘えた仕草に、衛も自然と笑みがこぼれた。
その体を傷つけないように、そっと引き抜き、もう一度キスをした。
「あ……」
「どうした?」
「今のキス、素敵」
「そうか」
後は、体液で汚れた早紀の体を、衛はていねいに拭いてあげた。
眠りの神が降りてきたところで、早紀は思った。
『恋人とか……、いるの?』
『恋人は、いないよ。どうしてかな、長続きしない』
その答えが、解ったような気がする。
(衛さんは、優しいんだ。優しすぎるんだ)
だから、怖い。
この人を失うことに、耐えられない。
「衛さん……」
「もう、寝なさい」
「僕を、恋人に。僕が、恋人に、なってあげ……る……」
それを最後に、早紀は眠ってしまった。
「えらく若い恋人が、できたもんだ」
にっこり笑って、衛は早紀の髪をかき上げた。
慈愛を込めた眼差しで、見つめた。
いつまでも、見守っていた。
ともだちにシェアしよう!