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第六章・2
鏡に顔を映し、早紀は呆れた。
何てひどい顔。
瞼が腫れて、目が半分しか開いていない。
早紀は、我が事ながら噴き出した。
「誰? この人」
そして、衛が今日はカフェを臨時休業にしてくれた思いやりを感じた。
「こうなる、って解ってたから。だから、カフェをお休みにしてくれたんだ」
やっぱり衛さんは、優しいな。
顔を洗うと、少しだけ大きく目が開いた心地がした。
タオルは、二本用意してある。
未使用のものが、早紀のタオルに違いない。
「こういう細やかな心配り、嬉しい」
体は重いが、心は晴れやかに早紀はキッチンへ向かった。
「おはよう」
「体は大丈夫か?」
「だるいよ。昨夜、激しかったから」
「す、すまないな」
そこで早紀は、ふふっと笑った。
「これって、恋人の会話だよね。僕たち、もう恋人同士でいいのかな?」
「恋人準備中、といったところかな」
衛はそこで、早紀にマグカップを差し出した。
いい香りだ。
一日の始まりにふさわしい、フレッシュな匂い。
「毎朝、カフェのマスターがコーヒー淹れてくれるなんて、ぜいたく~」
「そのうち、早紀に淹れてもらうからな」
そんなやり取りも、心地よい。
早紀は大喜びで、食卓に着いた。
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