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第六章・3

 ピザトースト。ベーコンエッグに、豆のサラダ。  フルーツヨーグルトに、リンゴを半分。 「リンゴ、可愛い」  衛の切ったリンゴは、ウサギの形を模していた。  食べるのが可哀想、などといいながら、早紀はリンゴを口にした。  少し、しょっぱい。  変色しないように、塩水につけてくれたに違いない。 「衛さん、ホントに気配り上手だよね」 「昔の恋人には、それが重かったらしいがな」 「僕は、素直に嬉しいよ」 「だといいが」  しゃりしゃりとリンゴを食べながら、早紀は衛の恋人について考えた。 (やっぱ、オメガ性だったのかな。今でも未練があったり、するのかな) 「衛さん。僕のこと、好き?」 「何を突然」 「今一番好きな人は、僕?」 「一番大切な人は、早紀だよ」  ううん、と早紀は考えた。  それって、父さんに預けられたから、だよね。 (早く、恋人だから大切、って想ってもらわなきゃ!) 「ね、衛さん。食器は僕が片付けるよ」 「いいのか?」 「うん。やらせて」  それは食洗器に食器をセットするだけの作業ではあったが、衛は嬉しかった。  早紀が自分から、お客様ではない、と言ってくれたような気がしたからだ。  食器は早紀に任せて、自分は洗濯に取り掛かる。  久々の二人での暮らしに、衛も心を温めていた。

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