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第六章・4
「物置にしては、片付いてる方だと思うな」
「褒めてくれてるのか?」
家事が整うと、衛は空き部屋を早紀に譲る準備にかかった。
要らないものが、たくさん眠っている部屋だ。
それは手に取ると、思い出を引き出す魔法がかかっている。
そんな風なので、衛は今までこの部屋を片付けられずにいたのだ。
「早紀が要らない、と思ったら、こちらに寄こしてくれ。処分する」
「捨てちゃうの?」
「ああ」
何だか責任感じるなぁ、とつぶやきながら、早紀は取り掛かった。
「これ。ひびの入った、マグカップ」
「これか……」
衛は、遠い目をしている。
「何か思い出があるの?」
「昔の恋人からの、プレゼントだ」
「捨てて!」
「はいはい」
次に、瀕死のサボテンが。
まさか、と思いつつ、早紀は真にうかがった。
「これも、昔の恋人が……」
「可愛がってた、サボテンだ」
う~ん、と早紀は迷った。
昔の恋人を思い出して欲しくはないが、サボテンに罪はない。
「じゃあこれは、僕が可愛がるから。衛さんは、サボテン見たら僕を思い出して」
「解った」
そんなこんなで不用品はどんどん片付き、午後にはきれいな早紀の部屋ができあがった。
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