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第六章・6
「早紀。辛かったり悲しかったりしたら、すぐに言うんだぞ?」
「ありがとう。でも、大丈夫だから」
衛さんが、傍にいてくれるから。
そう言って、早紀は笑顔を作った。
無理にゆがんだ、笑顔。
「早紀」
衛はその体を抱き寄せ、しっかりと抱いた。
「私は、いつも君の傍にいるから。だから、安心してくれ」
「あり、がとう。ま、こと、さん……」
ぎゅう、と早紀がしがみついてくる。
その声は、震えていた。
(やだな。もう泣かない、って決めたのに)
「おやつを食べに、街へ出かけよう。プレゼントも買ってやる。何がいい? 服か? 靴か?」
「衛、さん……」
ああ、衛さんは、こんなにも優しい。
早紀は、それだけに救いを求めた。救われた。
「フルーツパフェ、食べたい。冬のニット、欲しい」
「いいとも。さ、出かけよう」
早紀が着替え終わるまで、衛は彼を見守った。
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