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第八章・3

 衛の用意してくれたホットココアを手に、早紀と秀一は休憩室でくつろいでいた。 「忙しかったですね。午後はいつも、こうなんですか?」 「いや、今日は少し違うな。急にお客様が増えた感じ」  その答えに、早紀は嬉しそうに言った。 「僕、SNSにメビウス投稿したんです! その効果かなぁ?」 「そんなこと、したの!?」  商売は、繁盛した方がいいと思って、と早紀は無邪気なものだ。 (マスターは、このカフェを隠れ家みたいにしたい、と言ってたけどなぁ)  大人の、秘密の隠れ家。  それが衛の、メビウスの基本理念だった。  心からくつろいでいただける、上質な時間を提供したいと言っていた。  だが、早紀にそれを言うことは控えた。  衛に、こっそり聞いたのだ。  早紀の父が失脚して、姿を消したことを。 『今、早紀は傷ついた心を抱えてるんだ。少しの失敗は、許してやって欲しい』  そう、早紀のことを頼まれた。

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