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第八章・6
「僕、梅酒ロックがいい!」
「ダメだ。君はまだ、18歳だ!」
ケチ、と唇を尖らせる早紀は、衛に連れられて大衆居酒屋へ来ていた。
何かの焼ける匂いに、アルコール臭。
大勢の人たちに、酔っぱらいの笑い声。
味わったことのない雰囲気に、早紀はワクワクしていた。
「衛さんだけお酒飲むなんて、ずるい」
「私も飲まないよ。車だからな」
運転は代行業者に頼めばいいことだが、衛は早紀に気を遣ってノンアルコールのビールを頼んだ。
「じゃ、衛さん。乾杯!」
「乾杯」
二人でグラスを鳴らして、ドリンクを飲む。
それは久々に、早紀の心を浮き立たせた。
「ふふ。楽しいな」
「今度、歓迎会をしよう。早紀の、歓迎会を。宮木くんも一緒に」
「ありがとう!」
「宮木くんとは、うまくやっていけそうか?」
「大丈夫。優しい人みたいだよ」
そこへ、注文した料理が運ばれてきた。
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