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第九章・2
「衛さん、意地でもツリーを飾らないつもりだよ!?」
「マスターは、渋好みだからなぁ」
休憩室で、早紀は秀一にぼやいていた。
早紀の愚痴を受け止めながら、秀一は彼に金の折り紙を差し出した。
「これで星でも作って、マスターの目の前にぶら下げてたら?」
「いいかも!」
すぐに折り紙を手に取り、実行に移す早紀。
秀一は、早紀のそんな前向きな姿勢をまぶしく見ていた。
もっと言うなら、憧れてさえいた。
自分より3歳年下の、18歳。
(だけど、しっかりしてるよな)
見た目や言動、第二性から、軽薄で頼りなさげな第一印象を、秀一は早紀に持っていた。
しかし、今は違う。
彼の過酷な状況は、衛から密かに打ち明けられた。
自分なら押しつぶされそうな、不運。
それでも早紀は、その逆風に立ち向かい、日々明るく振舞っているのだ。
今だってほら、折り紙で星なんか作ってる。
「できた!」
早紀は折り紙でできた金の星を、大切にバッグにしまった。
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