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第九章・3

 その晩、寝室へ入った衛は、ベッドを見て苦笑いをした。  ヘッドボードに、金の星がキラキラと張り付けられているのだ。 「全く……」 「ねぇ、衛さん。メビウスに、クリスマスを展開しようよぉ」 「無駄に華美なものは、あのカフェには必要ないよ」 「無駄じゃないよ。きっと、お客様も喜ぶよ?」  その他にも、早紀はいろいろなクリスマス・サービスを衛に話した。 「クリスマスブレンド、作ったり。コーヒーのおまけに、ジンジャークッキー付けたり」 「なるほどな」  早紀なりに考えてくれている、というわけか。 「考えておく」 「もう! 即決してよ!」  遅いから、もう寝るぞ。  そう言って明かりを消し、衛は瞼を閉じた。  ところが……。 「ねぇ、衛さぁん。クリスマス、しようよぅ」 「艶っぽい声を出すなよ」  パジャマの上から、早紀が肩をカリカリとひっかいてくる。  猫のような声でねだられ続け、衛は熱くなってきた。

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