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第十章・4

「うぅ……」 「派手にイッたなぁ」 「衛さんのせいなのに」 「悪かったよ」  ぐったりと力を抜いた早紀の体を、衛は大切に扱った。  ウェットティッシュで汗や体液を拭き清め、パジャマを着せてあげた。  いつもなら、パジャマを着せてあげる頃には早紀は眠ってしまうのだが、今夜はがんばって起きていた。 「どうした?」 「ね、衛さん。明日、ツリーを買うよね」 「ああ」 「約束だよ?」 「約束する」  そこまで言うと、彼は満足げに衛の手を握り、瞼を閉じた。  その可愛い寝顔には、勝てない。 「私が、クリスマスツリーを買う日が来るとはね」  ふと見ると、枕元に金の星が落ちていた。  早紀が作った、折り紙の星だ。  幸いまだテープが生きていたので、衛はそれをヘッドボードに貼りなおした。  何だか、温かな心地だ。 「どんな豪華なツリーより、この星の方が素敵だよ」  そして、衛も瞼を閉じた。

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