68 / 145
第十章・4
「うぅ……」
「派手にイッたなぁ」
「衛さんのせいなのに」
「悪かったよ」
ぐったりと力を抜いた早紀の体を、衛は大切に扱った。
ウェットティッシュで汗や体液を拭き清め、パジャマを着せてあげた。
いつもなら、パジャマを着せてあげる頃には早紀は眠ってしまうのだが、今夜はがんばって起きていた。
「どうした?」
「ね、衛さん。明日、ツリーを買うよね」
「ああ」
「約束だよ?」
「約束する」
そこまで言うと、彼は満足げに衛の手を握り、瞼を閉じた。
その可愛い寝顔には、勝てない。
「私が、クリスマスツリーを買う日が来るとはね」
ふと見ると、枕元に金の星が落ちていた。
早紀が作った、折り紙の星だ。
幸いまだテープが生きていたので、衛はそれをヘッドボードに貼りなおした。
何だか、温かな心地だ。
「どんな豪華なツリーより、この星の方が素敵だよ」
そして、衛も瞼を閉じた。
ともだちにシェアしよう!