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第十章・6

 少し遅いランチを取りながら、衛は早紀に話した。 「クリスマスツリーを買うことが、こんなに楽しいとは思わなかったよ」 「良かった! 僕も嬉しいな」  今までの恋人は、みな私に合わせてくれたものだ。  ツリーは飾らない、と言えば、みな大人しく従ったものだ。  だが、早紀は違う。  自分の主張は、ぐいぐいと押してくる。  新鮮な驚きと喜びを、衛は感じていた。 「ね、クリスマスブレンドのコーヒーも、考えようよ」 「そうだなぁ。どんなイメージで行こうか」 「甘みのある、素敵な味。口当たりも、柔らかに」 「深煎りの豆を、使うかな」  そして、ジンジャークッキーを僕が焼く、と早紀は言う。 「いろんなクッキーを、焼きたいな。可愛いの」 「早紀は、クリスマスを楽しんでいるなぁ」 「せっかくのお祝い事なんだもん。思いきり、楽しまなきゃ!」  その無邪気さは。 (子どもだな、と言えば、怒るだろうな)  いや、子どもなんじゃない。  若いんだ。  早紀はまだ、18回しかクリスマスを迎えたことがないんだから。 「早紀」 「なに?」 「いい、クリスマスにしような」 「うん!」  いい笑顔の早紀は、いい返事をした。

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