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第十章・7
白いツリーを飾ったメビウスは、お客たちを喜ばせた。
「ここは、そういうイベントはしないと思ってたよ」
「ぱっと、明るくなったね」
クリスマスブレンドのコーヒーも、評判は上々だ。
そして、それに添えられる早紀が焼いたジンジャークッキーも。
「マスター、すっかり早紀くんに感化されちゃったんだなぁ」
「秀一さんのおかげだよ。折り紙の星、すごい効き目だったよ!」
金の折り紙、でねぇ。
「あの時作った星は、どうしたの? もう、捨てちゃった?」
「こっそり、お店のツリーに飾ってあるよ」
大切な、星だからね。
僕と衛さんの間に、クリスマスを運んでくれた、思い出のお星さま。
ベッドのヘッドボードなんて、ちょっと動けば破れてしまうようなところに貼っていたのに、衛さんはそうしなかった。
大事に、痛まないように、貼りなおしてくれていた。
早紀には、それが一番嬉しかった。
「来年も、再来年も。衛さんと一緒に、クリスマスが祝えればいいな」
そして、その時は父さんも一緒に。
そうつぶやきながら、早紀は銀の折り紙でまた星を作った。
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