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第十一章 一足早いイヴ

「ね、衛さん。クリスマスは、店休日にしないの?」 「そこまでは、できないぞ」  特に今年の24日と25日は、週末にかかる。 「お客様が一番多い時に、休めないからな」 「じゃあ、いつなら休めるのさ」 「店休日」 「火曜日じゃん!」  火曜日となると、28日だ。 「もうそんなの、お正月じゃないかぁ」  ぶつぶつと不平をこぼす早紀を慰めるのは、秀一だ。  またもや休憩室で、彼をなだめていた。 「仕方がないよ。接客業の、運命なんだから」 「また、金の折り紙で星を作ろうかなぁ」  ところで、と早紀は秀一を改めて見た。 「秀一さんは、どうするの? クリスマス」  イヴは、恋人さんと過ごすの?  にやけた早紀の視線に照れながら、秀一はうなずいた。 「うん、まぁ。店の予約とかは、してる」 「いいなぁ!」  イブに、素敵なレストランで食事。  プレゼントの交換。  そして……。 (エッチしたりするのかな?)  目の前にいるお兄さんが、と思うと何だか生々しい。  早紀は妄想を払うと、秀一に笑顔を向けた。

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