72 / 145
第十一章 一足早いイヴ
「ね、衛さん。クリスマスは、店休日にしないの?」
「そこまでは、できないぞ」
特に今年の24日と25日は、週末にかかる。
「お客様が一番多い時に、休めないからな」
「じゃあ、いつなら休めるのさ」
「店休日」
「火曜日じゃん!」
火曜日となると、28日だ。
「もうそんなの、お正月じゃないかぁ」
ぶつぶつと不平をこぼす早紀を慰めるのは、秀一だ。
またもや休憩室で、彼をなだめていた。
「仕方がないよ。接客業の、運命なんだから」
「また、金の折り紙で星を作ろうかなぁ」
ところで、と早紀は秀一を改めて見た。
「秀一さんは、どうするの? クリスマス」
イヴは、恋人さんと過ごすの?
にやけた早紀の視線に照れながら、秀一はうなずいた。
「うん、まぁ。店の予約とかは、してる」
「いいなぁ!」
イブに、素敵なレストランで食事。
プレゼントの交換。
そして……。
(エッチしたりするのかな?)
目の前にいるお兄さんが、と思うと何だか生々しい。
早紀は妄想を払うと、秀一に笑顔を向けた。
ともだちにシェアしよう!