78 / 145

第十一章・7

 展望レストランなので、夜景が美しい。 「窓際で良かったかな。寒くないか?」 「ううん。エアコン利いてるから、冷気が心地いいよ」  そう言われれば、少し赤い早紀の頬だ。  衛は、日中の早紀の様子を思い出した。 「具合はいいのか? 熱を測った方が良かったんじゃないのかな」 「熱があったら、このレストランもキャンセルじゃん」  大切な記念日だから、少しくらいは無理をしたい。 (それに、失敗したのは別の理由だからね)  そしてそれは、実現した。  一流ホテルのレストランで、ディナー。  さらに、衛がバッグから何やら取り出している。 (プレゼントだ!)  早紀の胸は、躍った。 (婚約指輪だったら、どうしよう!)  だがしかし。 「さあ、食事にしようか」 「え? うん……」  まぁ、いいか。  お楽しみは、もう少し先に取っておこう。  二人の記念日が、前倒しで始まった。

ともだちにシェアしよう!