80 / 145

第十二章・2

(さすがに婚約指輪じゃなかったけど、嬉しい!) 「ね、衛さん。僕に、付けてくれる?」 「いいとも」  これまた慣れた手つきなのが気になったが、早紀は舞い上がるほど喜んでいた。  別に、慣れてたっていいんだ。  今この瞬間の恋人は、僕なんだから! 「ありがとう、衛さん」 「とても、似合うよ」  ブラックとナチュラルレザー、色はどちらにしようかと迷った。  そんなことを衛は言っている。 「ただ、早紀の髪は栗色だから。ナチュラルの方が似合うかと思って」 「そこまで考えてくれたなんて!」  ああ、もう!  いますぐここで、抱きついちゃいたい!  瞬間的にそう考えてしまった早紀だが、それはすぐに現実のものとなる。 「実は、このホテルに部屋も取ってあるんだが。行くか?」 「そんなの、行くに決まってるじゃん。泊るに決まってるじゃん!」  まるで早紀が予約を取ったかのように衛の手を引き、部屋へ向かった。 「おい、そんなに急がなくても部屋は逃げないぞ」 「この気持ちが、逃げちゃう! 今の気持ちのまま、衛さんを……」  ドアを開け、室内に入ると、早紀は衛を抱きしめた。

ともだちにシェアしよう!