81 / 145

第十二章・3

「好き好き、大好き! 衛さん!」  胸に顔をぐりぐり擦り付け、早紀は全身で喜びを表現した。  もし、尻尾が生えていたら、ちぎれるほど振っているだろう。  その素直な、飾らない愛情表現に、衛は照れた。  何か、声をかけてやるべきなのか。  しかし、口を開くととんでもない事を言いそうで、恐ろしい気分だ。  それほど、早紀は愛らしかった。 (愛、か。愛してる、か?)  それは、言えない。  恥ずかしい。 「私も、早紀が好きだよ」 「嘘!」  やっと絞り出した衛の言葉に、早紀は目を輝かせた。 「衛さん、初めて僕のこと、好きだ、って言ってくれた!」 「そ、そうだったか?」 「うんうん。嬉しいよぅ」  このままではいつまでも腰にかじりつかれたままなので、衛は早紀をすくいあげて横抱きした。 「ひゃっ!」 「軽いなぁ、早紀は」  衛はそのまま部屋の奥へ進み、寝室に早紀を運んだ。

ともだちにシェアしよう!