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第十二章・3
「好き好き、大好き! 衛さん!」
胸に顔をぐりぐり擦り付け、早紀は全身で喜びを表現した。
もし、尻尾が生えていたら、ちぎれるほど振っているだろう。
その素直な、飾らない愛情表現に、衛は照れた。
何か、声をかけてやるべきなのか。
しかし、口を開くととんでもない事を言いそうで、恐ろしい気分だ。
それほど、早紀は愛らしかった。
(愛、か。愛してる、か?)
それは、言えない。
恥ずかしい。
「私も、早紀が好きだよ」
「嘘!」
やっと絞り出した衛の言葉に、早紀は目を輝かせた。
「衛さん、初めて僕のこと、好きだ、って言ってくれた!」
「そ、そうだったか?」
「うんうん。嬉しいよぅ」
このままではいつまでも腰にかじりつかれたままなので、衛は早紀をすくいあげて横抱きした。
「ひゃっ!」
「軽いなぁ、早紀は」
衛はそのまま部屋の奥へ進み、寝室に早紀を運んだ。
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