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第十三章 甘い甘いデート
すやすやと眠る早紀の髪を指先で弄りながら、衛は優しい目をしていた。
優しい目をしているのは、この小さな恋人を愛しているから。
自分でも無意識で放った、言葉だった。
『早紀、愛してるよ』
「もう、逃げも隠れもできないな」
私は、愛してしまったのだ。
こんなにも深く、この子を。
オメガのフェロモンでのぼせていたからか、とも思った。
しかし、情事を終えた今の方が、募る想いは勝っている。
「愛してる、か」
久しぶりに使った、この言葉。
早紀は、聞いていただろうか。
覚えているだろうか。
眠りから覚めれば、忘れているのではないだろうか。
「いっそ、その方がいいのかもしれない」
なにせ、14年も年が離れているのだ。
今後、早紀が他に思いを寄せる若い人間が、現れるかもしれない。
そうなると、また失恋だ。
「懲りないな、私も」
くすりと笑って、瞼を閉じた。
それでも、いい夢が見られそうな気がした。
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