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第十三章・3
チェックアウトを済ませ、二人は繁華街の商業施設に繰り出した。
「今日は、僕が衛さんにプレゼントしたいんだ」
「気を遣わなくても、いいぞ」
「クリスマスプレゼント。衛さん、欲しいものは何?」
「そうだなぁ」
大人の衛が本気で欲しいものを言っても、今はカフェ勤めの早紀には到底買えない。
(これは意外に、難しい問題だぞ)
「あ、できれば10,000円以内でね」
「それは嬉しい提案だ」
予算内で買える品といえば。
「あ、これどうかな!?」
「私が選ぶんじゃなかったのか?」
ショップに飾られたその品は、パワーストーンのブレスレットだった。
「シトリン、タイガーアイ、透明本水晶のブレスレット。金運、仕事運アップ! だって」
値段も9,658円と、予算内だ。
「僕、衛さんにブレスレットもらったから。お揃いにしたいな」
「お守りに、ちょうどいいかもしれないな」
スピリチュアルは信じていないが、せっかくの早紀の提案だ。
衛は、従うことにした。
「じゃあ、これを。いいのか? 高価だが」
「お給料、ちゃんと節約してるから大丈夫」
すぐに身に着ける品だが、早紀はスタッフに化粧箱に入れて欲しいとお願いした。
赤い包装紙に金のリボンが、いかにもクリスマスプレゼントらしい雰囲気だ。
そんな早紀の気遣いが、衛には微笑ましく嬉しかった。
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