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第十三章・4

 ランチは、どうしようか。 「僕、お好み焼きが食べたいな」 「クリスマスデート、なのにか」  え、と早紀は頬を染めた。 「う、嬉しいな。衛さん、そう思っててくれたんだ」 「まあ、それは。それなりに」  そこで、二人の手がこつんと当たった。  冷たい、お互いの手。  衛は、早紀の冷えた手をそっと握った。 「衛さん」 「繋げば、温かくなる」 「僕の熱を、衛さんにあげるよ」 「それは、こちらのセリフだ」  二人で手を繋いで、歩いた。  なぜだろう、胸が高鳴る。 (手を繋ぐ、なんて。今まで誰とでもやってきたのに) (柄にもなく、照れるな。相手が、早紀だからかな)  ああ、このまま二人でなら、どこまででも歩いて行ける。 「少し、歩こうか」 「僕も、そう思ってたところ」  お好み焼きの店は通り過ぎ、公園まで歩いた。  風は冷たかったが、二人の頬を手は、ぽかぽかと温かかった。

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