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第十三章・5

 公園には、クリスマスマーケットができていた。  日中でも瞬く、イルミネーションの灯り。  そこここに並ぶ、色とりどりのツリー。  平日の昼だが、人で賑わっており、美味しそうな匂いのする屋台も出ていた。 「衛さん。僕、グリューワインが飲みたい!」 「飲酒は20歳になってから、だ」  早く大人になりたいなぁ、とぼやく早紀だが、衛はそれをただ見守った。 (ゆっくり大人になればいい。急ぐことは、ないんだ) 「こいつを食べよう。ザワークラウトグーラッシュだ」 「美味しそう!」  ドイツ風ビーフシチューを、衛と早紀はベンチに掛けて食べた。 「ね、衛さん。来年もまた、クリスマスデートしてくれる?」 「気が早いな。もう来年の話か」 「こういうの、鬼が笑う、っていうのかな」 「よく知ってるな」  衛は笑顔で、その来年の話をした。 「来年は早々に、お正月デートをして欲しいんだが」 「嘘! いいの? お店は!?」 「さすがに三が日くらいは、休もう」  やったやった、と早紀は大はしゃぎだ。  はしゃいだ後は、急に大人しくなったが。 (初詣して、おみくじ引いて。初売り行って、その後……)  姫初め、だよね。

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