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第十三章・7

『他人に、早紀に対して色目を使われたくない』  これって。 (これって、早紀は私のものだ! って宣言してる、ってこと?)  見ると、衛は真面目な表情だが、少し耳が赤い。 「衛さん、ひょっとして照れてる?」 「まあ、多少は」 「嬉しいな。僕のこと、そんな風に考えてくれてるなんて」 「前にも言ったろう? 早紀は私の大切な人なんだ」  以前は、早紀の父から預かった、大切な存在だった。  しかし今は、それ以上の意味を持っている。 (大切な、恋人だ) 「おいで、早紀」  羽織ったロングコートで早紀を包むように抱き、衛は通りを歩き始めた。  これで少しは、オメガ・フェロモンの拡散を防げる。  他人の目から、早紀を守れる。 「えへへ。あったかい」  衛の心配をよそに、ご機嫌な早紀だ。  そのまま駐車場まで歩くと、衛のレクサスが待っていた。  彼の庇護から離れることは惜しかったが、早紀は仕方なくナビシートに座った。 「ね、衛さん。クリスマスデートは、まだ継続中?」 「家に帰るまでが、デートだよ」  二人、そっと近づいて唇を重ねた。  冷え切った車内が暑くなるほど、甘い甘いキスをした。

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