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第十四章・4

「宮木くん、良かったら私のマンションに来ないか? ささやかだが、クリスマスパーティーをしよう」 「賛成! 賑やかな方が、いいもんね!」  でも、と秀一はためらった。 「せっかくの、イヴだし。お二人の邪魔をしては……」 「気遣いは、無用だよ。むしろ、来てくれた方がありがたい」 「ご馳走が余ると、もったいないもんね!」  衛と早紀に支えられ、秀一は立ち上がった。  この温かな言葉がなければ、倒れたボクサーのように、いつまでも動けないところだった。  衛の車内では、早紀がナビシートから後部座席へと移動し、秀一をいたわった。 「昼間は、プレゼントありがとう。靴下、すごく気に入ったよ」 「色は、あれで良かったのかな」 「あったかそうな色だよ」  秀一はそこで、早紀の手首にブレスレットを見つけた。  エッジの銀がきらめいて、やけに秀一には明るく見えた。 「それ、もしかして。マスターからのプレゼント?」 「あ、解っちゃった?」 「良かったね」 「うん!」  きっと、高価な品に違いない、と秀一は考えた。  そして自分も、精いっぱい背伸びをして、高価な品を準備していたのだ。  それが……。 (やばい。何か、泣けてきた)  そこへ、早紀がそっと声をかけて来た。

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