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第十五章 気になる人
「何てひどい顔だ」
鏡に自分の顔を映し、秀一は呆れた。
今日は、12月25日・クリスマス。
本来なら、愛する人と朝を迎えるはずだった。
だのに……。
「後悔と恥に挟まれてる気分だ」
昨晩のことは、あまり覚えていない。
ただ、恋人に無残にも捨てられ、誘われるまま衛のマンションにお邪魔した。
激しい二日酔いの頭痛から察するに、ひどく飲み、酔ったに違いない。
「何か、マスターや早紀くんに、絡んでたような気もする……」
穴があったら、入りたい!
そんな、頭を抱える秀一を、呼ぶ声がした。
「秀一さん、朝ごはん食べられそう?」
「早紀くん」
優しい声に、くらりと来る。
また、泣けてきそうだ。
(いや、もう泣くのは終いだ)
なにせ、このむくんだ顔になるまで、昨夜は泣いたのだ。
「ありがとう。少し、お腹に入れようかな」
「よかった」
早紀に伴われてキッチンへ行くと、コーヒーの良い香りが漂っていた。
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