103 / 145

第十五章・4

「でも、今からどうするの? アパートに帰れば、独りだよ?」 「大掃除でも、するさ。年末年始は、帰省するし」 「いいなぁ」  ぽつりと言った早紀の言葉が、秀一を動揺させた。 「あ、ごめん。何か、傷つけた?」 「え!? う、ううん。別に、平気!」  このマンションが、僕の家だからね。  そう言う早紀だが、実際どうだろう。 「ね、早紀くん。家族とは、連絡取れないの?」 「うん……」 「マスターは? あの人なら、連絡先知ってるんじゃないの?」  それには、首を横に振る早紀だ。 「衛さん、知らないって言ってた」 「そう」  本当だろうか。 (まさか、マスター。早紀くんを手放したくないから、嘘を……) 「でもね、父さんから連絡が来たら教えてあげる、って言ってくれた」 「そう、だよね」  いけない、と秀一は自分を叱った。  恩のある人を捕まえて、疑うなんて! 「早く、また家族と一緒に暮らせるようになるといいね」 「うん」  その後は、少しだけ無口になった二人だった。  

ともだちにシェアしよう!