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第十六章 薄曇りの新年
「やったぁ! おみくじ、大吉だったよ!」
晴れやかな、新年が明けた。
早紀は衛と共に、初詣だ。
二人で買ったおみくじを見せ合いっこしたり、お揃いのお守りを買ったり。
楽しいひとときを、過ごしていた。
「衛さん、それは何?」
「福を招くかと思って」
衛の手のひらには、小さな招き猫の置物があった。
「可愛い! 衛さんがゲン担ぎなんて、珍しいね」
「早紀に、感化されたかな?」
衛の腕には、クリスマスに早紀から贈られたパワーストーンのブレスレットが。
彼はそれを大切に、肌身離さず持っていた。
(以前の私なら、まず考えられないところだが)
しかし、贈り主が早紀となると話は別だ。
それを身に着けている自分を見て、喜ぶ早紀が好きだった。
「帰りに、少しメビウスに寄るぞ」
「今日は、店休日でしょ?」
「うん。だけど、業者さんから年賀状が届いていると思うから」
二人は、誰もいないカフェへと出かけた。
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