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第十七章 衛の決意

「早紀くんは、お菓子作りが上手だよね」 「えへへ。ありがとう」  バレンタインデー用のチョコレートクッキーの試食を頼まれ、秀一はもぐもぐと口を動かしていた。 「これなら、お客様に出しても大丈夫だと思うよ」 「やった!」  じゃあ、衛さんにも食べてもらおう、と早紀は喜んでいる。 (衛さん、か)  秀一は、日に日に募る早紀への想いを持て余していた。  もう恋人のいる、年下の少年に恋をするのは初めてだ。  しかも秀一は、就活に本腰を入れるために2月末にバイトを辞めることにしている。 (悔いの無いように、告白した方がいいのかな。それとも……)  それとも、今の距離を大切に保ったまま、思い出にしてしまう方がいいのか。  こればかりは、衛に相談するわけにはいかない。  なにせ、その早紀の恋人本人なのだから。

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