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第十七章・3

「その人、実はすでに恋人がいて。無駄だって解ってるんですけど、想いを断ち切れなくて」  衛は、すぐにピンときた。  これは、その恋の相手というのは、早紀だ。  解ったうえで、衛は秀一に語った。 「その人のこと、幸せにする覚悟や自信は、あるのかい?」 「気持ちだけは、誰にも負けないつもりです」  秀一は、早紀より3歳だけ年が多い。  年が近い分、同じ話題で盛り上がったり、話が合ったりしているシーンは何度でも見て来た。 (早紀しだい、だな)  早紀も、秀一にはよく懐いている。  衛は、瞼を伏せた。 (後々のことを考えると、14歳も年の離れた男と一緒になるより、早紀のためかもしれない) 「私なら、告白するよ。言わずに後悔するより、ずっといいと思う」 「ホントですか!?」  ぱっと顔の晴れた、秀一だ。  これは、やめろと言っても好きだと言う方を選んだだろう。 「うまくいくと、いいな」 「ありがとうございます!」  そうなると。 (そうなると、私も行動を起こすべきだろう)  浮き浮きとした秀一に比べ、固い表情になった衛だった。

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