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第十七章・6
早紀の父親の行方は、何とか探し当てた。
これも本意ではなかったが、弓月家の力で捜索してもらい、衛は面会が叶った。
日差しのない、小さな古いアパートに、彼は潜んでいた。
「突然身辺を探るような真似を。お許しください」
「いいえ。それで、あの。まさか、早紀に何か!?」
「ご安心ください。早紀くんは、元気です」
良かった、と息を吐く紀明は、心底早紀の心配をしているようだった。
「実は今日は、大切なお話があって伺いました」
そして衛は、紀明の借金を返済する用意があることを告げた。
「もっと早くに、この提案をすべきだったと後悔しています。」
「いいえ、そんな。しかし、借金は2億円を越えています。そう簡単には……」
「恥ずかしながら、私はユヅキホールディングスの出なのです。実家の力を借りれば、2億程度はすぐに準備できます」
「ユヅキホールディングス……!?」
この国有数の大企業の名を出され、紀明は絶句した。
そこの御曹司が、何だって小さなカフェなどを!?
「若い頃から、父に反発ばかりしておりまして。私ももうこの年ですし、これを機に落ち着きます」
「いえ、あの。失礼ですが、弓月さんは、あのカフェを愛してらっしゃるのでは? 心から、バリスタという職業を望んでおいでなのでは?」
でなければ、ブラックアイボリーなど出すわけがない。
紀明は、衛が大切なものを自分のために犠牲にしている気がしてならなかった。
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