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第十八章 二つのプレゼント

 2月14日、バレンタインデー。 「衛さん! はい、チョコあげるよ!」  朝食の席で、無邪気に早紀が衛に赤い箱を渡してきた。  何から伝えれば、いいのか。  ただ、今すぐに言わねばならないことだけは、衛にも解っていた。 「ありがとう。手作りか?」 「うん。頑張ったぁ!」  箱を開けると、甘い香りが鼻をくすぐった。  お行儀よく並べられた、一粒チョコたちが、衛を迎えてくれた。 「トリュフもあるんだよ。衛さんは大人だから、リキュールも利かせたからね~」 「それは嬉しいな」  にっこり笑って、一粒口にした。  溶ける甘味が、舌に心地よい。 「これはいいな。コーヒーに合う」 「そう言ってもらえると、嬉しいな」  ご機嫌の早紀に、衛は心に決めておいた一つ目の言葉を投げた。 「私からのプレゼントは、メビウスで渡すよ」 「ありがとう。楽しみ!」  では、と二人は笑顔で朝食を終えると、身支度をしてカフェに向かった。

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