126 / 145
第十八章・5
「お父さん、気持ちが落ち着かれましたら、少しあちらで話を。今後のことについて、です」
「そ、そうですね。申し訳ない」
紀明は早紀と共に静かにコーヒーを飲み干し、衛のいざなう休憩室へと場所を移した。
「早紀と宮木くんは、悪いけど席を外しておいてくれ」
「解りました」
僕は聞いちゃダメなの、と早紀は不満げだったが、秀一になだめられてカウンター席に着いた。
「きっと、大人の話があるんだよ」
「秀一さんや僕だって、大人なのに!」
「まあまあ。それより、バレンタインデーのプレゼントがあるんだ」
「あ! 僕も秀一さんに、チョコ作ったよ!」
衛の真の狙いは、ここにあった。
二人きりにすれば、秀一が早紀に告白しやすい、と考えてのことだ。
そして、その狙い通りに話は進んでいく。
まずは早紀が、秀一にチョコを手渡した。
「頑張って、作ったよ。ちゃんと、ハート型にしたからね」
「うわぁ、ありがとう。食べるのが、もったいないよ」
衛はすぐにチョコを口にしたが、秀一はそうしなかった。
大切に、もう一度包みなおしてバッグに収めた。
「じゃあ、今度は俺の方から」
秀一が取り出したのは、チョコと、もう一つの箱だった。
ともだちにシェアしよう!