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第十八章・6

 秀一が早紀にくれたチョコは、高級ブランドのパッケージだ。 「嘘。こんな高価なチョコ!?」 「早紀くんには、それでも安いくらいだよ」  早紀は、その言葉に苦笑いした。 「嫌だなぁ。僕、もうそんなお金持ちじゃないもん」  父さんは帰ってきてくれたけど、多分これからは以前のような贅沢はできない。  一杯10,000円のコーヒーを飲んでいた時とは、訳が違うのだ。  だが、秀一の示す意味は、違っていた。 「そうじゃないんだ。早紀くんになら、たとえ一粒10,000円のチョコだって、ふさわしいってことさ」 「どうしたの、急に」 「俺の気持ち、受け取って欲しいんだ」  秀一は、もう一つの箱を早紀に渡した。 「な、何だろう」  今日の秀一さん、少し違うな。  ぐいぐい前に、押してくる感じ。  箱を開くと、中にはイヤーカフが輝いていた。  角のない滑らかな曲線の、おしゃれな逸品だ。 「これ、シルバーじゃないよね。まさか、プラチナ?」 「さすが早紀くん。すぐに解っちゃったね」  そして早紀は、秀一を二度見した。  彼の耳には、もらったイヤーカフとペアのものが光っている。 「秀一さん」 「俺、早紀くんのことが好きなんだ」  早紀の心臓は、とくとくと早く打ち始めた。

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