127 / 145
第十八章・6
秀一が早紀にくれたチョコは、高級ブランドのパッケージだ。
「嘘。こんな高価なチョコ!?」
「早紀くんには、それでも安いくらいだよ」
早紀は、その言葉に苦笑いした。
「嫌だなぁ。僕、もうそんなお金持ちじゃないもん」
父さんは帰ってきてくれたけど、多分これからは以前のような贅沢はできない。
一杯10,000円のコーヒーを飲んでいた時とは、訳が違うのだ。
だが、秀一の示す意味は、違っていた。
「そうじゃないんだ。早紀くんになら、たとえ一粒10,000円のチョコだって、ふさわしいってことさ」
「どうしたの、急に」
「俺の気持ち、受け取って欲しいんだ」
秀一は、もう一つの箱を早紀に渡した。
「な、何だろう」
今日の秀一さん、少し違うな。
ぐいぐい前に、押してくる感じ。
箱を開くと、中にはイヤーカフが輝いていた。
角のない滑らかな曲線の、おしゃれな逸品だ。
「これ、シルバーじゃないよね。まさか、プラチナ?」
「さすが早紀くん。すぐに解っちゃったね」
そして早紀は、秀一を二度見した。
彼の耳には、もらったイヤーカフとペアのものが光っている。
「秀一さん」
「俺、早紀くんのことが好きなんだ」
早紀の心臓は、とくとくと早く打ち始めた。
ともだちにシェアしよう!