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第十九章・5

「私は生涯、早紀を愛し続けるよ」 「じゃあ、なぜ」 「一番好きな人とは、結ばれないようにできているんだな。世の中は」  この短い恋も、散る。  だがその想いは、たとえ他の誰かと一緒になっても続くと、衛は考えていた。 「早紀には、宮木くんがいる。そうじゃないのか?」 「秀一さん?」  そうだった。  告白されたから、衛さんに相談しようと思ってたんだ、僕は。 「秀一さんは好きだけど、一番好きなのは衛さんなんだもん」 「ほら、やっぱり。一番好きな人とは、結ばれないんだよ」 「ひどい。ひどいよぅ……」  早紀は、泣いた。  泣き疲れて、眠ってしまうまで、泣いた。  こんなに泣いたのは、父と別れて以来だった。

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