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第ニ十章・5
2月末。
メビウスを閉店してしまう前に一度、衛は父に会う約束を交わした。
そして、ついにその日がやって来たのだ。
「自分の方から会いたい、など。衛の奴も、殊勝になったな」
いつも反発していた息子を思うと、少々物足りなく感じてしまうくらいだ。
衛の父は、彼が到着する時刻を今か今かと待っていた。
そこへ、ドアをノックする音が。
「旦那様。衛さまが、お戻りになられました」
「来たか!」
書斎に入って来た執事を下がらせ、衛の父は彼がこの部屋へ来るのを、胸を躍らせながら待った。
本当は、ポーチまで。
屋敷の外にまで出迎えに行きたかったが、それをこらえて自室で待っていたのだ。
「父親の威厳を、見せておかないとな」
しかしながら、3年ぶりの我が子だ。
ひとりでに頬が緩む。
ソワソワしていると、やがて再びドアがノックされた。
「お父様、衛です。ただいま帰りました」
「む、そうか。入りなさい」
一生懸命、抑えた声色で彼は息子を迎え入れた。
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