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第ニ十章・6
「ご無沙汰しております。お変わり、ございませんか」
「いや、なに。病気もしとらんし、……衛、その方は?」
衛の後にぴったりと付いて室内に入って来た少年が、いるのだ。
息子は、涼しい顔をして当たり前のように彼を紹介した。
「彼は、私の使用人として連れてきました」
「初めまして。梅ヶ谷 早紀です!」
衛の父は、驚いた。
「いや、そんな真似をしなくとも。使用人ならば、この屋敷に何人でも!」
「これまで彼には、私の身の回りの世話をしてもらっていましたから」
この口調。
堂々として、まるで悪びれたところがない。
(衛のやつ、まるで変わっておらん!)
その奔放さ、父に歯向かう姿勢は、3年前と。
いや、生まれてこの方、変わったためしがない!
「衛。その子は」
「ダメだとおっしゃれば、また家を出ますから」
「うぐぐ……」
まあ、いいだろう。
父は、息子に折れた。
(そのうち飽きて、放り出すだろう)
その程度に考えて、許した。
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