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第ニ十章・7

 父の書斎を退室した衛は、久々の自室へ早紀を招待していた。 「すご~い! お坊ちゃんのお部屋だぁ!」 「よしてくれ。恥ずかしいよ」  早紀が提案した、使用人作戦は成功した。  第一関門は、突破だ。  とにかく父に、早紀の存在を許してもらったのだ。  だが衛は、それで満足してはいなかった。  後は……。 「ね、衛さん。僕、ここで一生懸命に、衛さんに尽くすからね!」 「最初のうちだけでいいよ。近いうちに、私が君に尽くさせてもらう」  どういう意味?  きょとんとする早紀を、衛は抱き寄せた。 「早紀。今から、ピルは飲まないで欲しいんだ」 「で、でも」 「私の子を、宿して欲しい」 「衛さん!?」  お願いだ、と衛は早紀の目を見つめた。  自分を真っ直ぐに映している、その瞳を。 「私の子が君のお腹にいると解れば、父も認めざるを得ないだろうからね」  早紀が、どんなに私に必要な人なのかを。

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