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第3話
「その辺の女より、キレイな肌をしているじゃないか、煜瑾 」
「イヤだ…、触るな」
卑しい男たちに押さえ込まれ、最上級のシルクを使ったシノワズリデザインのジャケットを無理やり脱がされ、シャツの下の素肌を狙われているのは、やはり文維の見間違いでは無く、高校時代の後輩だった唐煜瑾 だった。
「今夜のパーティーは何でもアリだ。俺たちと一緒に楽しもうぜ、坊や」
「放せ!私に触れるな!やめろ!」
酒だけでは無く、何かを盛られたらしく、煜瑾は虚ろな眼差しで朦朧としているが、美しい体を這いまわる忌まわしい手を必死で拒んでいる。
「イヤだったら!…イヤっ!ヤメて!」
煜瑾の抵抗が悲鳴に変わった時、文維は堪りかねて足を踏み出していた。
「煜瑾じゃないか。顔色が悪いね」
かつて、上海一の美少年とも呼ばれた唐煜瑾は、男たちにイタズラされる不快感以上の、恐怖の表情を浮かべ、印象的な瞳を潤ませていた。
同じ高校にいた頃は、まさに絶世の美少年と言った風情だったが、卒業後10年以上経った今は、すっかり大人びて、美貌にも磨きがかかったようだ。
「包文維、先輩?」
涙で滲む視界ながら、煜瑾はようやく信頼のおける人物を見つけて、ホッとしたのか、救いを求めるように手を伸ばした。
だが、その少女のように白く、爪の先まで手入れの行き届いた、人形よりも美しい指先を、煜瑾を抱きかかえた男が掴んだ。
「邪魔をするな。今夜の煜瑾坊ちゃんのお相手は俺たちだ」
「イヤ!助けて、文維先輩」
引き寄せられ、頬擦りをされて、煜瑾は泣きながら悲鳴を上げる。
「どちらの紳士か存じ上げませんが、私は医師の包文維。唐煜瑾は私の後輩です。彼の具合が悪そうなので、あちらで介抱します」
いつもの柔和で本心の見えない、精神科医らしい笑顔で、文維はいかにも品性に欠ける男たちに話し掛け、救いを求める煜瑾に手を伸ばした。
「医者だかなんだか知らないが、関係のない奴は向こうへ行け!」
「それとも、痛い目に遭いたいのか?」
「この美人さんは、今夜は俺たちと、しっぽりお楽しみをご所望なんだよ」
そう言いながら、行儀の悪い男は白く艶やかな煜瑾の頬をベロりと舐め上げた。
品性だけでなく、常識にも欠けるのか、と文維は内心うんざりしていたが、顔には決して出さない。
「イヤーっ!そんなの嘘だ!助けて、文維!」
すっかり怯えて震えながら、煜瑾は泣きながら文維に助けを求める。
その必死さに、文維は引っ掛かった。
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