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第14話
「そんなに喉が渇いてたんだね?ジュース、お代わり入れるね。それと、日本のチョコ食べる?」
小敏 が立ち上がろうとするのを、玄紀 は慌てて引き留めた。
「そ、そんなことはいいから!私のお土産、見て下さいよ」
「あ、そうか」
パッと明るい顔をして、小敏は座り直した。
「じゃあ、ボクのジュース飲んでいいからね」
そう言って小敏が差し出したグラスに、玄紀はゴクリと喉を鳴らしてしまった。
(小敏の口が付いたグラス…)
たったそれだけの事で動揺するほど、まだ玄紀は純情だった。
「で、ドイツのお土産ってナニ?」
嬉しそうに付き合ってくれる小敏に、玄紀の気分も浮上する。
「あ、あのね。ドイツのチョコレートが美味しいって聞いたから、これを買って来たんです」
玄紀が最初に取り出したのは、一見は日本の板チョコのようだが、中にミントクリームが入った、元祖「チョコミント」だ。
「それと…、前に小敏の日本人の友達が言っていたヤツを買って来ました…」
取り出したのは、ドイツ産のチョコ菓子ではないが、ヨーロッパではよく知られている、中のキャラメルファッジをチョコでコーティングした「DAIM」という、キャンディーだった。
「あ、これ、浦東空港でも売ってるやつだ」
「……」
せっかくドイツから買って来たというのに、身も蓋もないようなことを平気で小敏は言った。
「でも、ボク、コレが大好きだから嬉しいな」
けれどすぐに、ふざけた小敏が、キャンディが詰まった赤い袋をギュッと抱き締めると、あまりに可愛らしくて、玄紀は見とれてしまい、ボーっとしてフリーズしてしまった。
「ありがとね、玄紀」
ちょっと小首を傾げて、ニッコリと笑う小敏の笑顔が眩しくて、玄紀はクシャっと泣きそうな顔になった。
「あれ?お土産って、チョコだけなのかな?」
小敏は遠慮なくギフトバッグを覗き込みながら言った。
「あ、コレ…ドイツとは関係ないですけど…」
おずおずと玄紀は、ルイ・ヴィトンのiPadケースと長財布を取り出した。
「EU土産ってことで、アリだね。良かったのかな、こんなに高いの?」
「小敏へのお土産ですよ。値段なんて関係ありません」
小敏が喜んでくれたことで、玄紀は嬉しくなってニコニコしながら答えた。実際、小敏が笑顔になってくれるのなら、玄紀はいくらかかろうとも気にならない。お金で解決するというのなら、全財産をつぎ込んでも惜しくないのだ。
「嬉しいな。ありがとう、玄紀。でもね、玄紀がくれるものなら、ボク、どんなに安い物でも嬉しいんだよ。だって、玄紀はいつだって、絶対にボクを喜ばせたいって気持ちでプレゼントを選んでくれるからね」
とんでもなく優しい事を言われて、玄紀は呆然となった。そんな風に小敏に思われていたと知り、この上なく胸が高鳴った。
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