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第57話

「ボク、酔ってしまって1人で帰れなくなって…。結局、文維(ぶんい)のアパートに泊ったんだけどさ~」 「どういうことなんですか!文維が、小敏(しょうびん)の家まで送って行けばいいじゃないですか!それか、私に連絡をくれたら、迎えに行きましたよ!」  何を飲んだのか、お酒の勢いもあって、玄紀(げんき)はブーブー言いながら、文維を睨みつけている。 「文維のアパートってベッドが1つしかないから、ボク、ソファで寝ないといけないのかなって思ったんだけど…」 「そんなの、文維がソファに寝ればいいんです。小敏はお客様なんですから」  プリプリと怒りながら、さすがにスポーツ選手だけあってアルコールにも強い玄紀は、グイグイと、上海の地酒とも言える黄酒「石庫門(シークーメン)」の20年物という高級品を、グビグビと飲み干していく。 「大体、文維は、小敏に構いすぎです。もう、付き合っているわけでも無いのに!」  玄紀の不満をさんざんスルーしてきた文維が、急に口を開いた。 「それでも、小敏は私の従弟(いとこ)ですからね」  当たり前のことをサラリと言って、文維は煜瑾(いくきん)の顔を見た。 「本当に、おいしいですね、コレ。煜瑾が勧めてくれるだけの事はあります」  文維が微笑んで褒めると、煜瑾もホッとしたように頬を緩めた。  そんな仲の睦まじい煜瑾と文維を見せつけられ、小敏はニッと笑った。 「ま、結局、昔みたいに、1つのベッドで一緒に寝たんだけどね」  それまで、春先の花のように、ホッコリとした笑みを浮かべていた煜瑾の表情が、その一言で強張った。 「いい加減にしなさいね、小敏」  決して叱りつけるようではなく、穏やかに文維は言った。 「何が?」  無邪気なふりをして、小敏は文維を見るが、何もかもお見通しの文維は、ふっと苦味の()じる笑いを、口元に浮かべ、軽く首を振った。 「小敏と、文維が、ひ、1つのベッドで…一緒に…寝た?…って、どういうことなんですか!」 「だって、ボクたち子供の頃からそうだよ。ね、文維」  これが、小敏の意地の悪い(たくら)みだというのは、文維も見抜いている。  ただそれが、煜瑾を挑発するためなのか、玄紀を焦らして苛立たせたいのか、その真意ばかりは量りかねていた。 「ボクって寒がりだから、ついつい文維に近付きすぎちゃって…」 「もう!文維は許せません!」 「玄紀は、さっきから何を言っているの?」  呆れたように小敏が言うと、玄紀は急にシュンとなって俯いてしまった。

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