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第59話
「ねえ、本当のところは、ボクと玄紀 はお邪魔だよね?」
小敏 は、半分冗談、半分本気で文維 に尋ねた。
「何を言っているんですか?いつまでもそんなことを言ってないで、早くこの食器を洗いなさい」
「え~、食洗器あるんでしょ~」
「どれも高級な食器です。煜瑾 自身ならともかく、私たちの物ではない以上、食洗器で傷でも付けたらどうするのですか」
久しぶりに文維から小言を受けて、うんざりしながらも、どこか嬉しそうな小敏である。
「まあ、あのまま玄紀はソファに寝かせるとして、ボクはゲストルームで、煜瑾と文維はやっぱり同じ寝室…ぃって!痛いよ、文維~」
食器を洗う、泡だらけの手で、文維は小敏の鼻をキュッと摘まんだ。
「つまらないことを言ってないで、早く手伝いなさい!玄紀には悪いが、あのままソファで寝てもらおう。さすがに体がガッシリしていて、重くてゲストルームまでは運べない」
「だね。じゃあ、煜瑾と文維は…」
「煜瑾は軽いので、自分の部屋で寝てもらいます。ゲストルームのベッドはセミダブルが2つなので、私と小敏で使わせてもらいましょう」
「え~、つまんないよ~」
何の不満なのか、小敏が唇を尖らせると、文維はまた小敏の鼻を摘まもうとした。
「ヤダ!」
「こら!」
小敏が文維の手を躱すと、文維が笑って追いかける。
まるで子供の頃のように、ワイワイと遊んでいると、いろいろと考えこまなければならないことが、まるで嘘のように忘れられた。
「あはは!文維なんて、怖くないよ~」「ふふっ、待ちなさい、小敏」
楽しくふざけつつも、文維と小敏は洗い物を終え、食器を片付け、残り物は冷蔵庫に、ゴミもまとめ、すっかりキッチンの片づけは住んだ。
2人とも留学中に1人暮らしを経験したため、身の回りの家事は一通りこなすことができ、苦ではないのだ。
「さあ、問題は酔っ払いの2人ですが…」
そう言いながら、文維はリビングに戻った。
「やっぱりね。静かだと思ったよ」
小敏はそう言って笑った。
ソファに身を任せ、すっかり眠り込んでいる2人は、まるで子供のような寝顔だった。
「なんだか、高校時代のサマースクールを思い出すね」
文維はソファの傍に座り、煜瑾と玄紀の幸せそうな寝顔を、懐かしそうに見守っていた。
「あったね~、サマースクール!4人で同じ部屋に寝て、夜中に幽霊が出るって話に夢中になって…」
「真夜中に幽霊を探しに行くと言って、小敏が聞かないものだから…」
少年らしい、ひと夏の冒険の思い出だ。
今となっては、本当に子供騙しのバカバカしい話なのだが、あの時はそれでも十分に怖さを味わったし、楽しかった。
共通の子供時代の思い出がある仲間が、今も友達で良かった、と小敏は思った。
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