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明月之夜 ~月の輝く夜に~ 第96話 | 荷蓮花の小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
明月之夜 ~月の輝く夜に~
第96話
作者:
荷蓮花
ビューワー設定
96 / 201
第96話
唐煜瑾
(
とう・いくきん
)
と
羽小敏
(
う・しょうびん
)
は、それから夜遅くまで、色々な話をした。 高校時代の思い出、大学の頃の思い出、そして…、最近の恋の話…。 たくさん話して、たくさん笑って、そして、ほんの少しだけ泣いたりもした。 そして、親友と話を深めるうちに、煜瑾は、何があっても、自分の意志で
文維
(
ぶんい
)
への気持ちを貫こうと決心していた。 翌朝、と言っても昼近くに起き出した煜瑾と小敏は、
茅
(
ぼう
)
執事が用意していた朝食を、時間を掛けて食べ、お昼過ぎには小敏は帰って行った。 そして、予定通り、1時には唐家の運転手の
王
(
おう
)
さんが煜瑾を迎えに来た。 観光地でもあるオシャレな
新天地
(
シンティエンディ
)
地区の南にある、新興のオフィスビル街の、中でも高級感を持つビルの最上階が、唐家のメインビジネスである
皇輝信託
(
ロイヤルシャイン・トラスト
)
のオフィスだった。 その名の通り、投資信託を行なう会社だが、煜瑾の仕事は決して多忙ではない。 兄の
唐煜瓔
(
とう・いくえい
)
の「社長室」の中からしか入れない、「副社長室」に出勤し、荷物を置いてデスクに座る。社長室からのドアは無く、兄が自分のデスクに座れば、煜瑾のデスクは良く見通せるという配置だ。 兄に見張られているような職場だが、煜瑾にはそれほど不満はない。むしろ、ずっと兄に見守られているのだと安心感さえ抱いて来た。 出勤してしばらくすると、兄の第2秘書である、語学が堪能な
呉香雨
(
ご・こうう
)
女史が、煜瑾の好きなハーブティーと共に、今日のスケジュールを伝えに来る。第1秘書の
宣格
(
せんかく
)
という男性は、唐煜瓔に同伴して北京に出張している。 煜瓔が居ないからと言って、絶対権力を持つ社長が溺愛する弟に対し、無礼を働くものは社内には居ない。 「煜瑾さま。こちらのパーティーの招待状のお返事に、サインをお願いします。全部で9通ありますが、出席と欠席が分けてありますので、お気を付けて。それから、こちらの社内報の原稿にお目通し下さい。何かお気づきのことがあれば、私が伺います」 それらしい「仕事」を受け取って、煜瑾は大人しく頷いた。 「煜瓔さまは、3時に浦東空港に到着されますので、4時にはお戻りです。簡単な報告のための幹部会議がありますので、ご出席ください。その後、定時には煜瓔さまとご帰宅いただけますよ」 「はい、分かりました。ありがとうございます」 母とまではいかないが、それでも母性を感じる年齢の呉秘書に笑顔を見せると、彼女も安心したように微笑んだ。 「昨日は、お友達と例のアパートにお泊りになったのですって?」 口調も少し砕けた感じになり、優しく呉秘書に質問され、煜瑾の頬が少し緩んだ。
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