fujossyは18歳以上の方を対象とした、無料のBL作品投稿サイトです。
私は18歳以上です
明月之夜 ~月の輝く夜に~ 第166話 | 荷蓮花の小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
明月之夜 ~月の輝く夜に~
第166話
作者:
荷蓮花
ビューワー設定
166 / 201
第166話
小敏
(
しょうびん
)
の案内で、
煜瑾
(
いくきん
)
と
玄紀
(
げんき
)
は
文維
(
ぶんい
)
が待つ部屋に向かった。 「事情は分かったけど、本当にシンデレラになるかどうかは、煜瑾が文維と相談して決めたらいいよ」 エレベータの中で、
粗方
(
あらかた
)
の事情を説明すると、小敏はそう言った。 「じゃあ、ボクらは行くね」 部屋の前まで来ると、小敏はカードキーを渡し、ニッコリと煜瑾を励ますような笑顔を浮かべた。 「え?どこへ行くのですか?」 煜瑾がキョトンとして小敏を見つめ返す。 「だって、話があるのは煜瑾と文維でしょ?ボクと玄紀は遠慮するよ」 「そうなんですか?」 てっきり自分も参加できると思っていた玄紀は、ガッカリした顔になった。 「その分、ボクがお相手するから、玄紀も文句を言わないの!」 「え?お、お相手?」 何かを期待したようにニヤニヤする玄紀を引きずるようにして、小敏は煜瑾に手を振ってエレベータの方へ戻って行った。 残された煜瑾は、カードキーを使う前に、息を整えて、ノックをした。 「はい」 室内から声がした。 「!」 それが誰のものかは、考えずとも分かる。 早く会いたいと気持ちが逸る煜瑾が、カードキーを差し込もうとした瞬間、ドアが開いた。 目の前に現れた姿が、煜瑾には涙に滲んで歪んで見える。それでも、それが誰であるのかは、ハッキリと分かっていた。 (文維…) 声を出そうとして、胸がドキドキして声が出ない。 (あっ!) そんな煜瑾の腕を掴み、文維は室内に引き入れ、乱暴にドアを閉めると、何も言わずに、煜瑾を強く抱きしめた。 煜瑾も、これが幻でないことを祈りながら、おずおずと文維の背に腕を回した。 ギュッと抱き合ったまま、2人はしばらく黙っていた。 不思議なことに、何も言わずとも、何もかも分かったような気がした。 文維は煜瑾を騙してはいないこと。煜瑾は、まだ文維を求めていること。2人が互いに愛し合い、必要としていること…。 「煜瑾…」 ようやく、押し殺したように文維が囁いた。その声が、甘く、濃艶で、煜瑾には刺激が強すぎる。 全身を紅くさせ、息が上がり、震える、
初心
(
うぶ
)
で過敏な煜瑾が、文維を誘惑する。 堪らずに、2人はどちらからということも無く、唇を重ねていた。そっと触れただけだったのに、そこから火が点いたように、互いに激しく求め合った。
前へ
166 / 201
次へ
ともだちにシェアしよう!
ツイート
荷蓮花
ログイン
しおり一覧