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明月之夜 ~月の輝く夜に~ 第182話 | 荷蓮花の小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
明月之夜 ~月の輝く夜に~
第182話
作者:
荷蓮花
ビューワー設定
182 / 201
第182話
文維
(
ぶんい
)
は、
煜瑾
(
いくきん
)
の真意を測りかねて、しばらくは、そのはにかんだ美貌を見詰めていた。だが、このままこの話題を避けて通るわけにもいかないと思ったのか、重い口を開いた。 「いいですか、煜瑾。私と同じベッドに入るという意味が、本当に分かっていますか?」 恥ずかしがる煜瑾をからかうようにではなく、真剣な眼差しで問う文維に、煜瑾はドキドキして緊張した。 「文維は…」 強い文維の視線に耐えられず、煜瑾は目を伏せ、小さな声で訊ねた。 「文維は、こんな、私でもいいですか?」 身を硬くして不安に襲われている煜瑾の様子に気付き、文維は少しでも緊張を解こうと、柔らかく微笑み、冗談めかして言った。 「こんなに、綺麗な姿で、美しい心で、カワイイ煜瑾で良いのか、と?」 「ふざけないで下さい」 顔を背けていた煜瑾が、文維を振り仰いだ。そこにあった、熱のこもった厳粛な文維の目に驚く。 まるで獲物を狙う狩人の目だ。以前にも、こんな鋭い視線で煜瑾を見ていた文維だった。 その時は気付くことが出来なかった煜瑾だが、今は、分かる。 どうして、文維が痛いような鋭い視線を自分に向けるのか、今の煜瑾には分かった。 「私が本気になっても、煜瑾は構わないのですか?」 文維の本気の意味を、煜瑾は深刻に受け止めていた。煜瑾なりに、ずっと考えて来たことだ。クリスマスイブの夜に、煜瑾の中では決心は出来ていた。それが、今夜になったとしても、それは自然なことだと煜瑾は思う。 「煜瑾は、それを望みませんか?煜瑾が拒むなら、私は、無理強いはしません」 黙り込んだ煜瑾をどう思ったのか、文維はそう言って、アクセルを踏んで、ハンドルを切った。 静かに進む車の中で、煜瑾は急に親友・
羽小敏
(
う・しょうびん
)
の言葉を思い出した。 (「小敏がそうしたいなら」と言われたから、かなあ) (なんか、ズルいなあって…) 煜瑾は心の中で何度も文維の言葉を繰り返した。 (煜瑾が拒むなら、私は、無理強いはしません) (煜瑾が、拒むなら…) 車は市内に入り、信号や渋滞で止まることが増えた。 (文維は?文維は、本当はどう思っているのですか?) 煜瑾は、いつものように俯いて唇を噛んだ。 (文維はズルい…。自分がどうしたいのか言ってはくれない。私に決めさせるのは、小敏が言っていた「ズルさ」と同じかもしれない) そこまで思って、煜瑾はゆっくりと顔を上げた。 (でも!) 煜瑾は、真っ直ぐ前を見て運転をする文維の横顔をソッと盗み見た。 (でも、私はもう文維を信じると決めたのです。それが文維のズルさだとしても、私への思いやりだとしても、文維の言葉を信じなければなりません) 車は南京西路に入った。煜瑾の部屋がある
嘉里中心
(
ケリー・センター
)
は、もう目の前だった。 「そんなに、簡単に諦めて欲しくはないです…」 煜瑾は、文維を見詰めながら、小さな声でそう言った。
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荷蓮花
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