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第192話

 大きなダイニングテーブルの角に集まるようにして、3人は腰を掛けた。  小敏(しょうびん)煜瑾(いくきん)が並んで座り、角を挟んで文維(ぶんい)が煜瑾の隣に座る。真横に座るより、90度の角度を挟んで座る方が親密度が上がることを、カウンセラーである包文維はよく知っているのだ。 「え?コレ、本当に煜瑾が作ったの?」  手作りのミートソーススパゲティを一口食べて、小敏は大げさなほどに言った。その様子に煜瑾は、嬉しそうに微笑んで、文維の方を振り返る。何よりも恋人の感想が気になるのだ。 「…ん…」  文維の薄い反応に、見る見るうちに煜瑾の表情が変わる。 「…お口に、合いませんでしたか?」  不安そうな煜瑾の顔を見た文維は、スッと長く美しい指先を伸ばし、恋人の小さな顎を掴んで引き寄せ、そのまま小敏の前で口づけて見せた。 「!」  驚いて声も出ない煜瑾に、文維は急に満面の笑みを浮かべる。 「パスタも美味しいですけど、煜瑾ほど美味しいものはないですからね」  そう言ってニヤリとする文維は、冷静沈着なセレブ専門の精神科医ではなく、セレブの男女に人気のプレイボーイの顔だった。それをよく知る小敏は呆れたように笑った。 「もう…、文維…」  初心(うぶ)な煜瑾はそんなことに気付かず、嬉しさと恥ずかしさに頬を染める。それが可愛らしくて、文維はもう一度煜瑾にキスをした。 「ボク、先に食べちゃおうっと」  2人を無視するように、小敏は煜瑾の用意してくれたランチを、旺盛な食欲で平らげ始めた。  文維と煜瑾は甘く微笑ながら見つめ合っている。 「はい…」  煜瑾がフォークの先に自慢のポテトサラダを乗せて、文維の口へと運ぶ。少し照れながらも、文維は口を開いた。 「美味しいですか?」 「もちろん、煜瑾の作った物は何でも美味しいですよ」  すっかり食べ終わった小敏は、2人の隠そうともしない熱愛ぶりに呆れながら、用意されていたレモネードを飲み干し、アップルパイを食べるためにコーヒーでも淹れようと立ち上がった。 「小敏」 「ん?」  文維に呼び止められ、小敏は振り返った。 「煜瑾には、お砂糖もミルクも多めですよ」  立ち上がった理由までもお見通しの文維に言われ、小敏は肩を竦めながらキッチンへと向かった。  それを確かめると、文維は煜瑾を抱き寄せ、より深く熱い口づけを交わした。  それをチラリと横目で見た小敏は、大好きな2人がこの上なく幸せそうにしている姿に、自分までも嬉しくて幸福感に包まれた。

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