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第195話
その日の午後1時、嘉里中心 にある人気の広東レストランで、羽小敏 と唐煜瑾 は、小敏の友人である日本人女性と待ち合わせた。
「わ~、スゴイ美形!イケメン!キレイ!カワイイ!」
小敏から紹介を受ける前から、桜花企画活動公司 営業部に勤める百瀬茉莎実 は、唐煜瑾の美青年ぶりに興奮していた。
「あ~、茉莎実ちゃん、こちらボクの親友の唐煜瑾くん」
「よろしく、唐くん」
初対面から屈託なく明るい百瀬に、煜瑾は目を見張るが、親友の羽小敏に通じる元気の良さに好感を抱く。
「で、こちら百瀬茉莎実さん。ボクらと同い年だから、緊張しないでいいよ」
「そうそう!小敏の友達なら、もう私たちは友達だから~」
ちょっと強引ではあるが、小敏に通じる人の良さに、煜瑾は少し安心した。
「よろしくお願いします」
優雅に微笑んで挨拶をする唐煜瑾に、はしゃいでいた百瀬もスッと冷静になった。その高貴な佇まいに圧倒されたのだ。次の瞬間には、すっかり煜瑾に魅了されていた。
「とにかく、食事しながら話をしようよ」
小敏はそう言って、メニューを開き、端から端まで読み始めた。
「唐くんは、本格的にインテリアコーディネーターのお仕事をするのは、初めてなんですって?」
ようやく落ち着いた百瀬は、人懐っこい笑顔で煜瑾に話し掛けた。この人懐っこい笑顔のせいか、小敏に似た感じがして、初対面の百瀬であるのに、人見知りの激しい煜瑾でもなんとなく馴染み始めていた。
「はい。なので、どこまでお役に立てるか分からないのですが…」
はにかむように微笑む煜瑾の高雅さに、百瀬も思わずウットリとする。
「でもさ、新鮮な感性を求めてるっていうなら、煜瑾は最適だよ」
横から3人分の注文を済ませた小敏が割って入って来る。
「あの…。小敏が、私の部屋を褒めてくれるので、写真を撮ってきました」
煜瑾はそう言って、持参したタブレットを開き、自分で撮影した室内写真を百瀬に見せた。
「わあ~ステキ~。これは書斎?パッと見た感じ、イギリスの古典的な書斎って感じなのに、よく見るとモダンな小物とかあって、オシャレねえ~」
「でしょ?ちょっとした小物の選び方とかが、煜瑾は独特でセンスいいんだよね」
小敏の後押しもあって、百瀬は話すのも忘れてタブレットの写真を見るのに没入した。
「もし、この後お時間があれば、実際にウチに来ていただいても…」
「え!いいの?」
嘉里中心に付随する、高級なレジデンスのお部屋を見学する機会などまずない百瀬は、嬉しすぎて悲鳴のような声を上げた。
「ええ。お茶くらいならお出しできます」
にこやかな煜瑾に、すっかり彼のファンとなっている小敏と百瀬は見惚れて幸せそうに微笑んでいる。
そんな話をしているうちに、小敏が注文した料理が運ばれてくる。
「あ、私の好きな叉焼 まんだ~」
「海老ワンタンは大好きです~」
2人の好みを熟知している小敏のセレクトに、煜瑾も百瀬も満足げだった。
ローストダックやスペアリブの甘酢煮込みなどボリュームのある料理もたっぷり食べて、3人はすっかり盛り上がって、楽しく、美味しいランチミーティングを楽しんだ。
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