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《乱される》14
和泉がゆっくりと身体を起こす。雪成のモノはすっかり萎えてしまったが、和泉のモノはまだ元気だ。
「言っただろ。俺はそっち側じゃねぇって」
「分かってる。でも前立腺マッサージだってあるだろ。それだと思えばいい」
和泉は雪成の腕を掴むとそのまま引き寄せて、ワイシャツの中へと手を滑らせていった。背中に指が滑るとゾクゾクと一気に官能の痺れが走っていく。
「ちょっ……おい、そこは関係ねぇだろ」
「どうした? まるで初心 みたいな反応だな」
耳元で囁かれる甘い低音に、雪成の腰が砕けそうになる。
この余裕のある態度が気に食わないのに、めちゃくちゃにしてやりたい、して欲しいとわけが分からなくなる。
「なら俺もしてやるから」
和泉の臀部へと手を持っていこうとするが、素早く手首を掴まれる。
「おい」
「今日はいい。今夜は雪を気持ちよくさせたいからな」
「俺をって……別に」
和泉の指がお腹へと回り、そして胸元へと滑っていく。雪成は思わず仰け反ってしまう。あの時車内で妄想した指なんかよりも遥に淫靡で、雪成の情欲が否応なしに煽られていく。
「……っ」
「いつも男を抱くとき、良い所を愛撫してやるんだろ? どれほど気持ちいいのか、自分で知ってみると、より相手を悦ばせる事が出来るんじゃないか?」
「……そのままそのセリフを返してやるよ」
和泉は頬に軽い笑みを乗せると、ボックスの中からローションを出してきて、直ぐにベッドへと乗り上げてきた。
雪成の目線はローションに釘付けになっている。今まで散々男を抱いてきたが、尻に異物が入る事によく恐怖を覚えないなと、今更ながら受け身側に感心した。
「なぁ、やっぱやめねぇ? こんなこと意味ねぇよ」
「なに、ビビってるのか? ヤクザが」
「ヤクザ関係ねぇだろ。それに俺はビビってねぇよ」
雪成は足で和泉の持つローションをつつく。
ヤクザがビビっているなど恥でしかない。冗談でもそれを口にされる事は雪成にとって、舐められていると同義で腹立たしい。
それでも本気で腹が立たないのは何故なのか。悔しいことに雪成は、完全に和泉の空気に飲まれてしまっていた。
「じゃあ、俺の膝を跨いで」
「チッ」
文句を言いたかった雪成だったが、どうせやり込められるのは目に見えている。苛立ちを主張するように、舌打ちするしか出来なかった。
(と言うか、雰囲気もクソもねぇな……)
それなのに、なぜ和泉はやめようとしないのか。不思議でならなかった。
「雪、シャツ脱がなくていいのか?」
裾から侵入した和泉の指は、相変わらず我が物顔で、雪成の脇腹を擽る。
「いい、裾を持っとけば問題ない」
全裸になってしまえば、色々な意味でもう逃げられないような気がしたのだ。
和泉は雪成の肌に触れる事に、全くの躊躇いがない。それは厚かましくて図々しいのだが、結局雪成も本気で嫌だとは思っていなかった。
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