和泉の指にローションが絡みつく様を目にしながら、雪成は全身から力を抜く。 「お手並み拝見だな。下手だったり痛かったりしたら、二度と触らせねぇから覚えておけよ」 「了解」 　和泉の余裕のある声に、雪成はますます脱力する。脱力したのも束の間、指が後孔の表面を撫でるように滑っていくと、身体にはたちまち力が入ってしまう。 「……っ」 　固く閉じた蕾を和らげるために優しく擦られると、それが返って妙な刺激となって、雪成の腰は自ずと逃げようとする。もちろん、逃げる腰は和泉の手によって阻止されてしまうが。 「なぁ……龍……それはいいから、挿れるんなら早く挿れろよ。ゾワゾワして気持ちわりぃから……」 　雪成の口からその言葉が出てくる事を待っていたかのように、和泉の目に飢えた野獣の眼光が露わになった。 　そこは何の抵抗もなく、和泉の指を飲み込んでいく。まだ一本という事もあるのだろうが、蕾をじっくりと解されていたことが大きいのか、一瞬指が入っていることが分からなかったくらいだ。 「いま三本目だ。見る限りでは痛そうには見えないな」 「く……あんま……見んな」 　和泉は一時も雪成の顔から目を離さない。小さな表情の変化も見落とさないといった風だ。 　暫くは狭い肉筒を広げる動きだった和泉の指が、徐々に淫らな動きへと変わっていった。 「……っ……ふ……」 　雪成の上がる息も少しずつ大きくなっていく。 　和泉の指は意地悪に、良い所を軽く掠めるだけでしっかりと触ってはこない。 　雪成は涙目になりながらも不満を訴えるように、和泉を睨んだ。 「雪も、相手には訊くんだろ？　どうして欲しいのかって」 「ネチネチすんなよ。これ以上調子乗るなら、この元気な息子の首をへし折るぞ」 　和泉のペニスをグッと握り込むと、雪成はカリの括れに指の輪で更に締め付けた。これだけ勃起していると結構痛いはずだが、和泉の表情はまるで変わらない。 「それはさすがに困るな」 「あっ！」 　いきなりの逆襲に雪成は白い喉元を野獣の前に晒してしまった。目の前の男はその好機を逃すはずはなく、喉に食らいつくように和泉は牙を立てる。 　歯が喉元に少し食い込み、苦しいのに気持ちいい。和泉が触れると痛みも快感に変わるのか。 「ん……く……っ」 　後ろも遠慮がなくなり、前立腺ばかり擦られ、雪成は声を殺すのもそろそろ難しくなってきた。 「あ……ぁ……そこ……ばっかりやめろ……よ」 「雪は我儘だな。まぁ、そこがいいと言うのか、そう思わせられるのか……」 「っ……なんて？」 　和泉の声が小さい事もあるが、大半は快楽のせいで頭の中が蕩けてしまっているため、聞き取る事が出来なかった。 「何でもないよ」 　和泉は雪成の後頭部に手を回すと、そのまま引き寄せてキスをした。