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※微 《乱される》23

 そうは言っても、まだ雪成には和泉ほど、彼自身に触れたいという強い欲はない。させてもらえるなら、直ぐに抱きたいとは思うが。  この差は何なのかと思うところだが、こればかりは雪成には分からず、どうする事も出来ないものだった。 「なら、今夜は好きなだけ触ればいい。まだまだ時間はたっぷりあるからな」  部屋のヘッドボードのデジタル時計は、深夜一時を表示している。  気持ちいい事なら雪成もやぶさかではないにしても、秘かに己が発した言葉に驚いていた。  まるで受け身側を許しているような発言だからだ。 「でも挿れるのは無しなんだろ?」 「もちろん」  このまま寝てしまうのも勿体ないし、和泉の事を思うと誰か女を呼ぶわけにもいかない。だからこれは遊びの一環だと思って楽しめばいい。  そう自分に言い聞かせた雪成は、バスローブの紐を解いて、前をはだけさせる。露わになった雪成の白い肌に、和泉は目を細めた。  白いがひ弱な印象を与えないのは、適度に、そして綺麗に付いている筋肉のお陰だ。(たいら)に見える胸板も、僅かに胸筋が付いている。ボコボコとくっきりとしたシックスパックも見事で、雪成自身もオメガの身体にしてはと、満足している。  和泉がそっと雪成の胸元に指を滑らせていく。 「じゃあ、遠慮なく触らせてもらうよ」  和泉の人差し指が小さな桃色の突起を引っ掻く。男なら先ず責めたい場所だ。だがこうして逆に責められる立場というものは、やはり違和感が拭えなかった。 「微妙な顔をしているな」 「当たり前だろ。普段は攻め側なんだから感じるわけない」  この後、この雪成の余裕の態度は、直ぐに粉々と砕け散ってしまうことになる。 「んぁ……やめ……もう……いてぇ」  執拗な胸への愛撫に、乳首が取れてしまいそうなほどにヒリヒリとしている。吹きかけられる息にも身体が反応してしまい、雪成は和泉にやめさせようと手で顔を押しのけた。  だが和泉にその手を掴まれた挙げ句に指を咥えられ、淫らにしゃぶられる。 「だいぶ感じるようになってきたな」 「感じてるんじゃねぇよ……。いてぇだけだ」  そう強がりのような発言をしてしまうが、自分でも分かっている。雪成が攻める立場なら、この受け身の反応には、和泉と同じことを言っているからだ。  和泉にもそれが分かっているようで、その口元には笑みがあった。 「あっ……」  不意打ちのようにツンと尖った乳首を舌の広い表面で舐められ、雪成は声を上げてしまう。  ビリビリと脳天まで突き抜ける痺れ。数分前まで何も感じなかった部位が、ここまで敏感になってしまう己の身体が怖かった。  そこから再び和泉の胸への愛撫が始まった。元は桃色だった胸も、乳輪から赤く染まってしまっている。

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