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第12話 人違い

 ―― ゴトンッ  大きな音が響き渡る。 「……っ」  ひゅっと息を飲む音が続いた。  ゆるりと振り返った男が、言葉を紡ぐ。 「お前の仇、取ってやったぞ?」  再び向き直った男は、ベッドに埋もるオレの身体に腕を回し、上体を引き起こす。  もちろん、男のペニスはオレのアナルに刺さったままだ。 「ん…、ふ、ぅ……っ」  角度が代わり、抉られ、押し開かれるアナルに、全身に痺れが走る。  慌て靴を脱ぎ捨て、部屋に入ってきた陽葵がオレの目の前へと回り込んだ。  びくんっと身体を跳ねさせたオレは、男の胸に背を預け、項垂れる。 「………っ」  オレの髪が捕まれ、顔を上げさせられた。  無表情を貫こうにも、オレの頭は足りない酸素を吸い込むことに必死だった。  せめて、無表情を貫きたかったが、蕩けた顔を曝してしまう。 「俺に抱かれてこんな顔するんだぞ? もう、女なんて抱けねぇだろ」  上気する頬、潤んだ瞳、勃起するペニス……、すべてが物語る。  理性は綺麗さっぱり溶かされ、跡形もなかった。  ―― パンッ 「……ぶっ」  陽葵の平手が、男の頬に飛んだ。 「何してんのよ!」  仁王立ちで男を叱る陽葵を、オレは呆けた顔で見上げていた。 「いってぇな。何すんだよっ」  髪を掴む男の手に爪を立て、引き剥がした陽葵が、オレを正面から抱き締める。 「もぉっ。バカっ! 早く抜けっ」  引き剥がそうと足掻く陽葵に、オレはそのまま伸し掛かるコトしか出来ない。  納得のいかない男は、離れるオレを追うように、ぐっと腰を押し進めた。 「ん、ふっ……」  再び、奥をじわりと押し開かれ、オレの口から情けない声が零れた。 「お前の顔、腫らした仕返ししてやってんだぞっ。こいつに守る価値なんてねぇだろっ」  お人好しも大概にしろっ、と男が吠える。  男2人に押し倒された形になった陽葵の手が、オレ越しに男に飛んだ。 「違うっ。この子じゃないんだって!」 「……はぁ?」  一瞬の沈黙の後に、男の素頓狂(すっとんきょう)な声が響いた。

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