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第15話 色恋は存在しない < Side 天原

 俺は、衝動的に明琉を口説きにかかっていた。  これっきりで手放すのは、惜しいと感じた。  冗談混じりに立てた俺の小指を、迷いながらも明琉は掴む。  一緒に暮らし始め、2週間ほどの時が過ぎていた。  明琉がヤりたくなければヤらないといったのに……。 「ぁ……、あ、もっ……と…」  玄関を入って直ぐ。  リビングへと続く廊下の壁に手をつき、尻だけを出した明琉の腰が、艶めかしく揺らぐ。  俺など前を寛げただけで、着衣はほぼ乱れていない。  俺のペニスを根本までずっぽりと咥え込んだ明琉のアナルが、舐めしゃぶるように蠢く。 「……、なん、で、部屋、…まで、待てねぇ、…のっ?」  叱るように下から突き上げる俺の腰つきに、明琉は背を仰け反せる。 「ん、は…ぁ………ぁ、あっ……」  逃げるように爪先立ちになる明琉の尻に力が入り、ペニスが激しく締めつけられ、動きが止まる。  ゆったりと奥まで押し込み、明琉の耳許で囁く。 「……っ。喰い千切る、気かよ…?」  熱の籠る吐息を漏らしながら、俺の肩に後頭部を(なす)りつける明琉。  とろりと蕩けた瞳で俺を誘う仕草に、明琉の髪を掴み、半開きになっているその唇に噛みつく。 「ん…、ん……ぁ、は………」  無理矢理に重なり合わせた唇。  苦しい体制にも関わらず、明琉は舌を伸ばし、俺の口腔内を犯してくる。  ここ数日、毎日だ。  工事現場の仕事が終わり、次のバイトを探していたが、家のコトをしてくれるなら、働かなくていいという俺に、明琉は職探しをやめた。  俺は数時間で片付くような小さな仕事がぽつぼつと入り、ここ数日は、会社員のようなタイムスケジュールで動いていた。  玄関まで出迎えた明琉は、帰宅の言葉を掛ける間もなく、俺のベルトに手を掛ける。  出来た隙間から手を突っ込み、下着の上からオレのペニスを揉む。 「シャワー浴びる? でも、どうせ汗かくし…、このままでいいよね?」  にぎにぎとオレの股間を刺激しながら、唇や頬、首筋を甘噛みしてくる。 「お前は、猿かっ」    ほぼ毎日、こんな状態だ。  俺の言葉を聞き流した明琉は、廊下の壁に手をつき、口を開く。 「性欲の解消もしてくれるって言ったじゃん」  ずるりと下着ごと部屋着のスウェットを引き下げた明琉は、準備万端なローション塗れのアナルに指を挿し込み、くぱぁと開く。  掌で散々に弄ばれ、こんなエロい姿で誘われれば、場所や時間など、どうでも良くなる。  溜め息を吐きながらも、俺は明琉の誘いに簡単に乗ってしまう。  俺の口腔内を擽る明琉の舌。  まるで愛し合っているかのようなこの行為には、そんなものは微塵も含まれていない。  この関係は、恋愛のそれではなく、あくまで俺の明琉へ向けた償いだ。  目覚めさせてしまった性欲の処理と、早合点から傷物にしてしまった詫びとして提供する衣食住。  俺の失態から始まった関係は、ドキドキと高鳴る胸を伴うものじゃない。  キラキラとした甘酸っぱい感情を伴うようなものでもない。  ……そう、自分に言い聞かせる。  こいつはただ、セックスがしたいだけなのだ、と。

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